毎日新聞/和歌山/紀南 2008年7月24日 地方版

西村記念館:市民有志、「守り伝える会」結成 広く浄財募る−−新宮 /和歌山

 老朽化が進んで傷みが激しい「西村記念館」(新宮市伊佐田)を自分たちの手で保存しようと、市民有志らが「西村記念館を守り伝える会」を結成した。「まだ間に合う、力を合わせれば」と、広く浄財を募る活動を始めた。

 記念館は、文化学院(東京)創設者で建築家の西村伊作(1884〜1963)と家族が住んだ住宅で、木造瓦ぶき2階建て延べ約246平方メートル。自らが設計し1915年に完成させた。明治から大正へと時代が移る中、封建的な気風を打破し、家族生活を中心とした欧米のリビング様式を取り入れた住宅として知られる。00年2月、国の登録有形文化財になった。当時のまま保存され、市が管理、運営し一般公開している。

 伝える会は、西村邸について「当時、多くの芸術家が訪れ、一大サロンを形成していた。日本で最初の『居間式住宅』といわれ、2階に風呂、1、2階にトイレを備えるなど米国の近代住宅の影響を強く受けている。水回りから排水まで緻密(ちみつ)に設計され、環境を配慮した建物でもある。保存のため最善の努力を続けることが使命」とする。

 「建物の一部が傾き、白アリ被害もみられ、床や窓枠の傷みが進んでいる。小規模の補修はしている」と市教委。伝える会は「改修を含めた修復には1億円以上かかる。文化財を守る行政の取り組みも支援したい」と協力を呼びかける。

 募金は一口1000円。振込先は「新宮信用金庫本店 普通1053288 西村記念館を守り伝える会」。【神門稔】